デスティネーション・ストア | File 041
2024.05.10

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 041:SUHO(東京都・駒場東大前)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。今回のFile 040は渋谷からのアクセスも良好なのに意外と知られていないエリアの一つ、駒場東大前にオープンしたアイスクリームとコーヒーのスペシャリティカフェ「SUHO」。

Text Takaaki Miyake

誰にとっても心地良い空間

SUHO

アイスクリーム&コーヒーはおそらく万国共通で多くの人に愛される存在だろう。その“二大巨頭”を同時に、しかもそれぞれにこだわった味を楽しめるのが、2024年1月にオープンしたカフェ「SUHO」だ。

井の頭線の駒場東大前駅が最寄りのため都心から足を運びやすく、付近には住宅や学校、公園が並ぶ落ち着いた雰囲気が漂うこのエリア。そんな周辺の景色とも調和する白を基調とした店内を見かけると、通りかかっただけでついつい中を覗いてみたくなってしまいそうになる。

そんな「SUHO」を手がけているのは意外にも、人気のハンバーガー店「Burger Mania」など今では「SUHO」を含む7店舗を運営する会社の MANIA CORPORATION。オープンから現在にいたるまで、その会社の代表を務める守口駿介さん自らが店頭に立っている。

守口さんがそもそも飲食業界へと足を踏み入れたその理由を次のように教えてくれた。

「もともと自分の性格として、一つのことにのめり込んでしまうんです。高校まではサッカーに打ち込んでいましたが、学生時代に働いていた飲食店がきっかけで、この世界に魅了されました。僕に会いに来てくれるお客さんがいたり、そういった人とのコミュニケーションは他ではなかなか味わえないと思います。

飲食の仕事って、やっぱりほぼ全てが対ヒトなんです。自然と近い距離感で話せることもそうですが、身体の中に入っていくものを提供しているという意味でも。バーガーも味や素材にこだわりながらも一つのツールと考えていて、僕がやりたいことはあくまで、お客さんはもちろんスタッフにも気持ち良いと感じてもらえる空間作りなんです」

アイスとコーヒーのセレクトショップ

そして今回の「SUHO」をオープンするにいたった経緯には、守口さんの友人の存在があった。

「2階にはフォトグラファーの友人が運営する撮影スタジオが入っているんです。以前は建築関係の資材を扱うショールームがあって、何度か行ったことがありました。なので場所も建物自体も認識をしていたんです。そんなある日、彼から『1階のテナントが空くからお店をやってほしい』と言われたのがきっかけでした」

突然の連絡だったが自身のワクワクする気持ちに従い、とりあえず“何かしら”お店をオープンすることを決意。スペースとしては大きな窓があり、沿道の幅も広く、近くにはベンチもある点から、コーヒースタンドとしてのポテンシャルは感じていたという。

ただし根底にあったのは、あくまで「気持ちの良い場所作り」という守口さんの信念であり、最終的には自身がこれまで出会ってきたコミュニティを紹介するというコンセプトに辿り着いた。

その内の一人が“旅する八百屋”として知られる「青果ミコト屋」の​​​​鈴木鉄平さんだった。ミコト屋ではロスになる青果を生かしたクラフトアイスを生産しており、そのアイスを食べられる都内でもまだ数少ない場所の一つがこの「SUHO」。

「鉄平さんにはこれまで色々と助けてもらったり、視野を広げてもらえたりした経験がありました。ミコト屋の取り組みは側から見ていても気持ち良いし、応援したいなと自然になるんです。長年応援したいなと思っていて、やっと今回の『SUHO』で実現できました。彼らの活動を知ってもらうことで、周りの人にもプラスになっていけば嬉しいです」

コーヒーも守口さんの縁ある生産者の豆を使い、アイスと同じく季節ごとにフレーバーやブランドが入れ替わる、まさにセレクトショップのような魅力が詰まっている。

ポリシーとその想い

SUHO

「SUHO」にはオープン時から掲げる、基本的に“店内撮影禁止”という一つのルールがある。多くの情報発信源がSNSである現代においては、このポリシーはかなり少数派なのは間違いない。

しかしその裏側には納得の理由がある。写真を撮ることに夢中になるあまり、最適な食事のタイミングを逃し、飲食を通じたコミュニケーションが疎かになると、当然気持ちの良い空間作りも難しくなるからだ。

「撮影禁止に関しては、消費されずに、永く愛されるお店にしたい純粋な気持ちからなんです。だけどそれを高圧的だったり、絶対に禁止というほどの重いルールだったりにはしたくなくて」

SUHO

堅そうに聞こえるルールをフレンドリーに伝えたい。その想いは入口のサインにしっかりと表現されている。実はこの絶妙に“ゆるい”デザインを手がけた人物こそ、他ならぬ小学生の守口さんの息子だ。デザインを学んでないからこそ描けるこの自由な発想が、オリジナルのトートバッグのデザインになっているのも面白い。

ローカルの盛り上げ役を担う

SUHO

オープンからわずか約5ヶ月ながら、フラワーマーケットやアロマ、ワインのイベントなども開催している「SUHO」。そのコラボレーション先のほとんどが付近のお店なのは、あまり知られていないこのエリアのスポットを知ってもらうためでもある。

「イベントを定期的にやっていくことで、何か面白いことをやっているお店として認識してもらえたらなと思っています。コラボレーションもお店同士のお客さんが行き来できたり、このローカル全体を少しでもあったくなったりできると良いですね」

現在ではオリジナルのスイーツもラインナップに加わり、今後もアップデートされる「SUHO」のセレクトするアイスクリームとコーヒーをめがけつつ、付近のエリアの散策も一緒に楽しめそうだ。

DESTINATION STORES | File 41
スーホ | SUHO
東京都目黒区駒場2-16-4 1F
営業時間:11:30〜18:30
定休日:不定休(Instagramから確認)
https://www.instagram.com/suho_tokyo