File 071:沐読(東京・羽根木)
静けさと、人の気配が漂う読書室
HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。今回は都心にいながら、ゆったりとした時間の流れと緑を身近に感じられる世田谷・羽根木エリアにオープンした読書室「沐読(もくどく)」を訪ねた。本を読むことだけに浸るという、現代において、ある種の“贅沢”とも言える空間。この場所には本を介した対話や、人と人との静かな気配が穏やかに漂っていた。
Text Takaaki Miyake
映画館で映画を観るように、一冊をこの場所で読む

自宅や移動中でも、場所や時間を問わずに誰もが嗜むことのできる読書。これまで身近な行為だった一方で、スマートフォンのみならず様々なデバイスやコンテンツによって、少し遠い存在になってしまった人も多いのではないだろうか。そんな本を読む機会が少なっているからこそ、自ら足を運んで能動的に没入する。本を買う書店とも、蔵書が多い図書館とも違う場所、それが樹齢100年を超える木々に囲まれる読書室「沐読」だ。
京王井の頭線・新代田駅から続く住宅街に位置する花屋「malta(マルタ)」の休日にだけ、そっと姿を現す「沐読」。もちろん「沐読」の店主である見米峻史さんも日常的に読書を楽しむ一人だが、単なる本好きではなく、読書をする時間そのものや空間にも魅力を感じてきたと話してくれた。
「昔からホテルやリトリート施設といった、自分と内省する場所が好きでした。そんな時は必ず本を持参して、気持ちの良い空間で読書する。それが自分にとって、すごく良い時間の過ごし方だったり、リラックスができたりする感覚があったんです」
そんな自身の原体験がきっかけとなり、まさに読書家たちの“憩いの場”としてオープンしたこの読書室には、季節ごとにゲストがキュレーションする本棚を設置している。このゲストキュレーターにも、もちろん見米さん独自の視点が反映されている。
「キュレーターの方々に対しては、3つの明確な理由のもとお声かけをしています。まず“美しいモノやコトを丁寧に生み出している”。次に、“心を動かす表現を作り続けている”、そして“本やそれを取り巻く世界の力を信じている”方々です」
こうした本を通しての、偶発的な出会いや人との繋がりが楽しめるのも「沐読」ならではの魅力。一方で実際に足を運ぶ人は、読みたい本を持ち込む場合も多く、そのほとんどが2時間ほどの滞在だという。どこでも読める本を、あえてこの場所で読む。この行為を選択をする余白こそ、現代の読書家たちは求めているのかもしれない。

本を読むための空間で読書することは、映画館で映画を観る感覚と少し似ているのかもしれない。いつもとは違う、少し特別なこの場所でお気に入りの一冊と向き合ってみたい。
DESTINATION STORES | File 71
モクドク | 沐読
住所:東京都世田谷区羽根木1-21-27 ⻲甲新 ろ棟59
(フラワーショップ malta 内)
営業時間:10:00〜18:00(月曜・火曜)
※最終入店は17:00
定休日:不定休
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