File 073:Koss Coffee(東京・大岡山)
スペシャリティコーヒーを日常に
HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。これまで本企画でも幾度か訪れた目黒区・大岡山。静けさを纏いながら、センスの光る店が点在するこの街に、また一つ新たな“デスティネーション”が誕生した。焙煎から抽出、そしてバリスタまでを店主がひとりで手がけるコーヒーショップ「Koss Coffee」。今回は、その一杯に宿る哲学を探る。
Text Takaaki Miyake
ローカルに息づく、その一杯を求めて
アートギャラリーやライフスタイルストア、ジュエリーショップなど、少数精鋭ながらも感度の高い店が点在する目黒区・大岡山。その一方で、スペシャリティコーヒーにおいては未開の地でもあったこの街の一角に、コーヒーショップ「Koss Coffee(コスコーヒー)」が2024年11月、ひっそりとオープンした。
曲線美を描くカウンターと、温もりを感じさせるベンチが迎える店内には、オープン当初はあえてテーブルは置かず、スタンディングでコーヒーを楽しむ人の姿も珍しくない。誰にとっても心地よい距離感を保ちながら、自然と人が滞在したくなる空間が広がる。

店主の河原佑哉さんは、オーストラリア・シドニーでの“コーヒー留学”を経て帰国後、「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」や「Switch Coffee」といった実力派のコーヒーショップで経験を積んできた。そんな河原さんが提供するのは、世界各国の豆を浅煎りから中煎りがメイン。スペシャリティコーヒーでありながらも、あくまで“デイリー”に寄り添うことを大切にしている。強い酸味を打ち出すのではなく、甘さや全体のバランスも考慮した、毎日でも飲みたくなる一杯。それが、この場所で早くも支持を集めている理由のひとつでもある。

その思想は、コーヒー以外からも垣間見える。河原さんが「自分が食べたいもの」として自ら作るバスクチーズケーキは、唯一のフードメニューとして人気を集めている。特別なものではなく、日常の延長線にある美味しさ。こういった感覚からも、この店の哲学が伝わってくる。いわゆる“コーヒー好き”にだけ向けた空間ではなく、誰もが自然に立ち寄れる開かれた空気がここには漂う。
「Koss Coffee」はまだ完成された場所ではなく、これからも足を運ぶ人とともに育てていくものだという。最近ではカッピングイベントを定期的に開催するなど、コーヒーをきっかけに人と人とがつながる場としての役割も生まれはじめている。記名式のポイントカードや、年末年始も変わらず営業を続ける姿勢からも、この場所がローカルに根ざしていく意志が強く感じられる。
わざわざ足を運ぶ理由は、決して特別な体験のためだけではない。日常の延長にある一杯を、心から味わうために。「Koss Coffee」は、そんな時間を求めて訪れたくなる場所なのかもしれない。
DESTINATION STORES | File 73
コスコーヒー | Koss Coffee
住所:東京都大田区北千束1-29-1
営業時間:8:00〜16:00、9:00〜16:00(土曜)
定休日:火曜日
https://kosscoffee-online.stores.jp/
https://www.instagram.com/kosscoffee/




