日本ファッションとの繋がり、俳優業との両立、現在のライフスタイルまで語る
Edit&Text by Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Interview Portraits by Keiichi Nitta(ota office)
香港出身の世界的人気俳優であり、ファッションブランドMADNESS(マッドネス)を手がけるShawn Yue(ショーン・ユー)がMADNESS 設立10周年に際して来日し、原宿でPOP-UPを行った。POP-UPには、ショーンと親交があり、コラボレーションなども行った経緯のあるPeace and Afterのカルバン・チェン、NEIGHBORHOODの滝沢伸介、Maison MIHARA YASUHIROの三原康裕、White Mountaineeringの相澤洋介、N.HOOLYWOODの尾花大輔、など、当メディアでもよく知られるデザイナーたちも祝花を贈り、駆けつけるなど大きな賑わいを見せた。
ショーン・ユーはインスタグラムのフォロワーが460万人を超えることが示す通り、香港、中国を中心に絶大な人気を誇る。それは俳優としてだけでなく、同時にファッションの世界でも巨大なインフルーエンス力を持つことも意味している。
今回HONEYEE.COMでは、来日したショーン・ユーにインタビューを敢行。MADNESS、そしてファッションに対する想いだけでなく、普段のライフスタイルまで踏み込んで話を聞くことができた。
日本ファッションの影響
― 人気俳優でもあるあなたが、ファッションブランドを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
ショーン・ユー : もともとファッションには興味があって、洋服の原材料やデザイン、縫製パターン、生地に至るまで個人的に良いものを模索していました。より良いものを自分で作りたいと考えて、ブランドを始めたというのがきっかけです。
― どのようにファッションに目覚めて行ったのでしょうか。日本のファッションは少なからず影響を与えていますか?
ショーン・ユー : 割と幼い頃からファッションには興味がありました。ただ若い頃はお金がなかったので、リユースショップに行って、よくLevi’s®やVANSなどを買っていましたね。10代になると日本の文化とファッションに興味が湧き、日本の雑誌を読み漁るようになって、より強い関心を持つようになりました。
― その中でも衝撃を受けたのはどういうものでしたか?
ショーン・ユー : 当時は日本のファッション雑誌がたくさんあったので、それから毎月見るようになりましたが、中でもキムタク(木村拓哉)さんの影響は大きいと思います。日本のドラマもよく観ていましたし。当時の雑誌では、RED WINGとか、Levi’s®、NUMBER (N)INE、それ以外の原宿のブランドもチェックしていた記憶があります。
― 今回10周年を迎えたMADNESSは、どのようなコンセプトでスタートしたのでしょうか。かなりデニムやアメカジがベースにあるように感じます。
ショーン・ユー : 昔、古着屋に通っていた時には、お気に入りの洋服があっても、自分のサイズに合わないことも多々ありました。そういう部分を解消したかったというのもありますが、そもそも私は「流行りのもの」を作るのがあまり好きではなくて、流行に左右されないような服、そして自分が着たいものを作ろうと思っていました。それがそのままコンセプトになっています。
― これまで日本のファッションクリエイターや、ブランドとのコラボレーションも数多く実施していますが、ブランドを選ぶ基準はどのようなものでしょうか?
ショーン・ユー : 基準というものは特に設けていないですが、ベースにそのデザイナーさんとの友人関係があって、その人と話をしているうちに、「こういう展開があったら面白いよね」など話をしながら進めています。私が親しくさせていただいているデザイナーの皆さんはそれぞれ風格、独自のスタイルを持っています。たとえば(NEIGHBORHOOD)滝沢さんだったらバイカー的なデザイン、(N.HOOLYWOOD)尾花さんは古着などのベースがあるし、White Mountaineeringの相澤さんはアウトドア、それぞれ個性があるので、そのベースの中から相談をさせてもらっています。
― 日本のブランドやストリートカルチャーには、どのような魅力があると感じていますか?
ショーン・ユー : 一番魅力に感じるのは、どこも徹底的に自分のブランドを追求しているところだと思います。しかもとても深く追求していますし、その追求が深ければ深いほど、ブランドの魂が磨かれます。日本のブランドの魅力はそこだと思います。
香港、中国のファッション、そして俳優業との両立
― ショーンさんは日本のファッションについてよくご存じだと思いますが、逆に現在の香港、中国のファッション事情について教えていただけますか。
ショーン・ユー : 日本との違いで言えば、中国は国土がとても広大であるということが言えます。その中にはいろんなジャンルのファッションがあり、それを自由に選ぶことができる環境です。どのジャンルにもファンは存在していますし、それはなかなか日本からは知られていないところもあると思います。なので、なかなか一口に説明するのが難しいんです。
― その中でも注目すべきファッションはありますか?
ショーン・ユー : それは僕ですかね(笑)。この分野に関して、私はかなり先駆者になるので、自信があります。そして今後は“先輩”として、下の世代を育てていかなければならないと思っています。
― 俳優業とファッションクリエイティブの両立はどのように成立させているのですか?
ショーン・ユー : はい、それがなかなか難しい(笑)。基本的にMADNESSの仕事は毎日関わりを持っています。だから俳優の仕事が入った時には、本格的に撮影に入る前にこちらの仕事を終わらせるように調整しながら両立させるようにしています。
― 俳優、ミュージシャン、ブランドと、ショーンさんは幅広く活躍をしてきましたが、次にやりたいことはありますか?
ショーン・ユー : やりたいことはたくさんあるのですが、その中でも空間デザインや、インテリアの領域には非常に興味があります。まだ仕事にするのは畏れ多いですが、やってみたいことではあります。ただ、仕事にすると疲れてしまうので(笑)、現状は個人的な趣味の範囲にしておきたいですね。
HONEYEE.COM
10 questions to SHAWN YUE
- 日本でお気に入りの場所は?
中目黒。
静かなところが気に入っています。
2 . 香港(もしくは中国)でおすすめの場所は?
上海。
気候的には上海も香港も似ているのですが、多角的な文化が混じり合っているのと、独自の魅力もあり、上海の食べ物も含めて日本の方にはおすすめしたいです。
3 . コレクションしているものはありますか?
コレクションしているものが多すぎて、絞れないな(笑)。
でも今は陶器と花瓶を集めています。好きになったのは、個人的に天然のものが好きだったこと、そしてどれひとつ被ることがない、オンリーワンなところにとても魅力に感じています。実際に毎日使っています。毎日のように食器や花瓶を変えることで、気分が上がります。
4 . 最近密かに気になっているものは?
モーターサイクルですね。
去年ハーレーダビットソンを買いました。
5 . 健康や肉体を維持するために実践していることは?
毎日テニスをやっています。
マッチョになりすぎるのはあまり好きではないので、テニスはちょうどいいんです。
いま好きなプロテニス選手は、カルロス・アルカラス。
6 . まだショーンさんの出ている作品を観ていない人に、最初に観て欲しい映画は?
少し前の作品になりますが、『志明与春嬌(恋の紫煙)』を最初に観て欲しいかな。
7 . 自分以外で、「こうありたい」と思う俳優はいますか。
ホアキン・フェニックス。特に『JOKER』は素晴らしいと思いました。
彼が出ている作品に魅力を感じますし、彼の演技も非常に好きです。
8. いま若い世代の人にやっておいた方が良いことなど、アドバイスはありますか。
どんなことでも構わないので、自分の好きなことをやるべきだと思います。
それをやることで、自信になってくるはずです。
そして好きだからこそ成功に繋がると思います。
9 . 自分が絶対にやらないことは?
ダンス(笑)。
全然ダメだから(笑)。
10. 「老い」をどう捉えていますか?
老いとは魅力であると思います。
年齢を重ねるほどに経験が増え、気力のみなぎりも感じますし、若い時は考え方も自分の興味があるものが定まっていなかったりすると思いますが、歳を重ねるにつれて、自分の魅力や好きなことがどんどんハッキリしてきます。それが形成された時に完璧な自分になれると思います。
Profile
ショーン・ユー (余 文楽)| Shawn Yue
1981年香港生まれ。俳優、ミュージシャン。ストリートでスカウトされてモデルデビューし、2002年に台湾版『あすなろ白書』で一躍人気を獲得。代表作には 『インファナル・アフェア』シリーズがある。俳優業のかたわら、2010年にはファッション・ブランドのCOMMON SENSE+を立ち上げ、2014年にMADNESSもローンチ。数々の日本ブランドとのコラボレーション実績もあり、日本のデザイナーとの親交も深い。
https://www.instagram.com/lok666/
https://www.instagram.com/madness_online/
MADNESS 10TH ANNIVERSARY TOKYO POP UP 情報
期間2024年2月14日(水) 〜 24日(土)
時間:11:00 am - 7:00 pm
場所:東京都渋谷区神宮前4丁目25−28 2F
[編集後記]
香港、中国、そして日本でも絶大な人気を誇るショーン・ユーさん。今回貴重な時間をいただいて初めてのインタビューとなったが、その人柄には一気に魅了された。短い時間ではあったが、こちらの質問にはどれも真摯に、そして笑顔を絶やさず答えてくれたのが印象的だった。10 Questionで「毎日テニスをしている」という話になり、個人的にもテニスファンなので嬉しくて、もっと突っ込んで話をしてみたかったが、時間もないので、「お気に入り」の選手を尋ねるにとどめた。(武井)